＊＊　記念講演　『音楽と私と未来と・・・』　＊＊

講演と弾き語りと奈良女と・・・

　辛島さんは、『教育界に縁の深い奈良女出身なのに何故音楽の道に？』という誰もが抱く疑問に先ず答えてくださった。理由は二つ。幼い頃から、例えば遠足の前日にお弁当の蓋を開けた時の歌を作るなど、曲作りが日常的な営みだったこと。受験勉強一本槍の小中高時代を経て大学に入学した後、自分の歌を単に客観的にとらえたいと思い、また努力の証としてヤマハのポプコンに出場したところ、それが今日に至る音楽活動の扉を開いたこと。

　グランプリを受賞した「雨の日」は、故郷の鹿児島を離れた孤独感から誕生した。奈良女に入学しなかったら絶対に生まれて来なかった曲だと辛島さんは力説された。また、デビューは二十代の終わり頃で、書けども書けども曲を認めてもらえない不遇の時期があったこと、女子刑務所の慰問、お父様を亡くされた経験、そして東日本大震災を契機に人と人の絆の尊さについて熟考したこと、四十代を迎えた時に昔の経験がプレゼントの束と化し、気持ちが楽になったことなどを、ピアノの弾き語りを織り込みながら真摯に語られた。

　質問の時間に合唱部の先輩との邂逅(かいこう)を喜ばれていた辛島さん。「音楽家として奈良女出身のプラス面とマイナス面は？」の質問に対して「地味だがきちんとしている奈良女気質」と「一定の筋道を踏み、考えて動くので発進が遅いこと」と即答された。鋭い。辛島さん、やはりあなたは奈良女の方だ。

　最後は「手をつなごう〜ひとりぼっちじゃない〜」の曲に合わせ、会員全員が手をつないでひとつになった。解散時刻ぎりぎりまでＣＤジャケットへのサイン、写真、握手に快く応じてくださった辛島さんに感謝申し上げる。

文責　　吉田 美津江（大24）