平城京は和銅元年（708年）に女性の元明天皇が平城遷都の詔を出し、２年後710年に藤原京から遷都。この遷都計画は文武天皇の死により頓挫した事業をその母親の元明天皇が実行したものと考えられる。以後、聖武天皇の一時期を除き７代７４年間が平城京の時代となり、歴代遷宮（天皇の代替わり毎の遷都）の伝統は終わりを告げた。

〔平城宮と平城京〕天皇の住まい(内裏)や諸官庁、儀式を行う場所などを「宮」というのに対し、その周辺の碁盤の目のような都市計画(条坊制)を持ったところを「京」とよんで区別する。右京、左京などがあり、余談ながら、左京の二条の六坊に現在の奈良女子大はある。

　その平城京の特徴として条坊地割が後まで壊されずに残った。特に大路は良く残っている。平城京の大きな特色である。藤原京や長岡京などは都でなくなったら、全部こういう道路を壊して水田につくりなおしているのだが、平城京では都のブロックのまま、水田に代わっているため往時の道路がよく残っている。平城京の朱雀門と東大寺を結ぶ道路二条大路。聖武天皇も光明皇后も女子大南の道を通って大仏殿に行ったことになる。

　近年大和郡山市での発掘調査により、奈良時代当初、左京地域では十条大路まで広がっていたことが判明。その「左京十条」地区がいつ造られ、いつ廃されたのかなどが平城京の都市計画を巡る大きな問題点として浮上してきている。

　ところで、平城京へはなぜ２年で遷都できたのか。その謎が大極殿周辺の整地土中から出土した木の札に文字を書いた木簡により解明された。それは内裏と日常的政務を執る施設ができた段階で遷都したからである。大学に例えるなら、講堂はなくとも教室さえあればとりえずはやっていけるわけで、儀式を司る大極殿は遷都5年後にできたと考えられている。要は未完成のまま都は遷るのであり、造営工事はその後も続く。

　平城宮跡は「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録された。２０１０年には平城遷都１３００年記念事業が平城宮跡で挙行される。歴史を大切にするまちづくりをしていく中で、奈良女子大学も何か協力できたらいいなと思っている、と舘野教授は締め括られた。

映像と文字資料を駆使したお話は興味深く、しばしば差し挟まれる東向き商店街や餅飯殿通りなど懐かしい地名に頷きつつ、私達は「古代の都の内に位置する唯一の国立大学」で学んだことに改めて感慨を覚えた。(文責 大宮千代 ）